キューバなんて大っ嫌いや!!!
ここ、バラデロのバスターミナルで私は叫んでいた。
話を遡ること一日前。
この日わたしは、ハバナから他の都市へ移動するバスの乗車券を購入するため、ハバナにある高級ホテルのツアーデスクにいた。
英語を話す国のお客さんも先に何人か並んでいて、わたしの順番がまわってくるまで20分ぐらい待った。
ようやく呼ばれたツアーデスクで、スタッフのお姉さんにこう尋ねる。
愛
「二日間で最高に楽しめるオススメの場所はどこですか?」
お姉さん
「その日程ならバラデロがベストだわ!ハバナからも近いし、海もすごく綺麗よ」
昨晩エヴァも言ってたあのバラデロか。
やっぱりキューバといえばバラデロなのか。
ということで、勧められるままバラデロへ行く手配をしてもらうことにした。
最初はバスの乗車券だけ購入して、現地に行ってから自分の足で安宿を探そうと思ってた。
でも色々話を聞いていくと、バラデロには「オールインクルーシブ」とゆうものがあって、リゾートホテルに滞在している間は、飲食やビーチアクティビティがすべて無料になるというのだ。
値段を聞くと、2泊3日で2万円ぐらいだった。
私は、お姉さんの前で少し考えた。
きっと探せば、バラデロにも一泊数千円の安いドミトリーはあるはずだ。
でも、安宿を探すために歩き回ったり、情報を得るためにWi-Fiカードを購入したり、WI-FIが使える場所に行ったり、宿への交通手段を考えたり、、、
ハバナ滞在中に感じた「面倒くささ」が、いつのまにか大きなジレンマになっていた。
このときの私は、とにかくキューバでの不便さから逃れたかった。
愛
「いいです!それで!申し込みます!」
私はオールインクルーシブプランを申し込んだ。
すると、お姉さんが不思議なことを言い始めたのだ。
お姉さん
「復路のバス乗車券はここでは手配できないから、現地のバスターミナルに行って自分で購入してね。バラデロに着いたらすぐに買いに行ったほうがいいわ。すぐ売り切れてしまうから」
出たよ!出た!出た!これがキューバだよ!(゚Д゚)
なんでそこはオールインクルーシブにしてくれへんの?泣)
「なんでなん?」って、もう疑問ばっかり沸き上がってくる。
だけどそれは、日本で育ったゆるあまな私の常識であって、キューバという国では通用しないってことは認めないといけない。
だから、目の前のお姉さんがそう言うなら、もうそうするしかないんだ。
そんな感じで翌朝、ハバナからバラデロへ向かった。
バスで3時間だったのでお昼前にはホテルに着いた。
予約されていたホテルは想像以上に豪華で、ここがキューバだとゆうことを一瞬忘れさせてくれた!
久しぶりに「大の字」になって寝ても余裕の大きなベッドに感激!
それに大好きな海と綺麗なビーチにもすぐ行ける!
取り急ぎチェックインを済まして身軽になってから、昨日お姉さんに言われた通り、帰りのバス乗車券を買うために、早速バスターミナルへ行くことにした。
二日後にはハバナに戻らないと、次の国へ行くための飛行機に乗り遅れてしまう。
だから帰りのバス乗車券が売り切れてしまっては困るのだ。善は急げだ!
愛
「バスターミナルに行きたいんですけど」
ホテルのフロント
「ホテルの前の道をまっすぐよ、タクシーで15分ぐらいで着くわ♪」
車で15分なら全然歩ける距離じゃんって思い、わたしは徒歩でバスターミナルへ行くことにした。
タクシー代なんて使ってられない。節約できるところは節約する。
フロントで「まっすぐ」と聞いた通り、わたしはとにかく海岸沿いをまっすぐ歩いた。
大西洋の水平線を真横に見ながら歩ける気持ちいい道路だが、影は一切なかった。
でもね、途中からおかしなことに気づき始めた。
いくら歩いても、景色が全然変わらないのだ。
「このまっすぐ道は永遠か?」とゆうぐらい道は果てしなく続いた。
タクシーで15分のまっすぐ道を歩けると思った私が馬鹿だった。
車で15分のまっすぐ道を徒歩に換算すると、2時間になるなんて誰が想像できる?
愛
「おかしい、、、何かがおかしい」
愛
「もう着くやろ、もうそろそろ着くやろ」
何十回もこんなお念をブツブツ唱えながら、やっとのこっさでたどり着いたバスターミナル。
ちっさいちっさいバスターミナルでした。
バスターミナルの中に入ると、私と同じような境遇の人達が常に15人ぐらいカウンターに並んでいた(!)
でも、カウンターにスタッフはおらず、すぐ横にある事務所から出てくる気配が全くない。
そうなんです。スタッフ全員休憩しとんねん(怒)
はい、これがキューバですよ!これがキューバね!みなさん!
愛
「これって帰りのバス乗車券を買うために並んでるんですよね?どれぐらい待ってるんですか?」
前に並んでた人にそう聞きながら、さらに待つこと数十分。
ようやく現れたスタッフは、怖そうなおばちゃんだった。
カウンターに「ドスン!」と座り、「次〜」と無愛想な態度で仕事をはじめだす。
その威圧感は、乗車券を購入する人たちが、まるで囚人に見えてしまうほど強かった。
わたしの前に並んでいた人達がみんな「パスポートを見せろ」と言われていたので、私も準備してきたパスポートを装備する。
そしていよいよ私の順番がやってきた。
愛
「ハバナ行き、一枚」
おばちゃん
「いつ?」
愛
「明後日の午前中です」
おばちゃん
「売り切れよ」
愛
「・・・・・・」
愛
「・・・はい?」
おばちゃん
「売ーりーきーれ」
愛
「・・・・・・はい?」
おばちゃん
「だからその時間のバスは売り切れだって言ってるでしょーが!」
愛
「いや、無理っす!その日の夕方までにハバナの空港に行かなあかんのに!」
愛
「無理です!なんとかならないんですか?!」
おばちゃん
「NEXT!(次!)」
愛
「は?!話すら聞いてくれへんの?!このOBACHAAAAAAN!」
ここで私は、あの禁句をおもいっきり叫んだ。
「I hate Cuba!!!」
(キューバなんて大っ嫌いや!!!)
愛
「・・・・・(怒涙)」
愛
「・・・・・(悔)」
そんな怒り叫んだ私の後ろから、急に優しい声が聞こえてきた。
「嫌いにならなくていいよ」
パッと後ろを振り返ると、シマシマの服を来たおっちゃんが英語で私にそう言って、状況を優しく聞いてくれた。
「君は、あさってハバナに帰らないといけないんだね?」
「もしかしたらキャンセレーションの枠に乗れるかもしれないから確認してあげるね。ちょっと待っててね」
ヤルキスとゆう名のキューバ人のおっちゃんは、私の話を全っ然聞いてくれなかったおばちゃんに、再びキューバの言葉を使って交渉を謀ってくれたのだ。
でも、ヤルキスも「このおばちゃんでは話にならないな〜」と首をかしげていた。
だけどそのあと、こう言って私に笑いかけてくれた。
ヤルキス
「違うスタッフに聞いてみよう!大丈夫だよ、きっと!」
愛
「・・・・はい(涙)」
こんな優しい人のいる国で、、、
こんなに優しいあなたの目の前で、、、
あなたの国を大嫌いだなんて言って、、、
本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本っ当に本当に本当に本当にごめんなさい。
私はヤルキスに謝った。
ヤルキス
「はははっ!もう嫌いにならないでね!」
彼はそう言って優しく笑い飛ばしてくれた。
ヤルキスがバスターミナルのオフィスで偉い人を捕まえて交渉してくれたお陰で、キャンセレーションとゆうか「予備で一人はいつも乗れるようにしてるから大丈夫だよ♪」的な感じの枠に無事乗れることになった。
だけど私はもう口約束だけでは怖かったので「何か証明になるものを書いてもらえませんか?」とその人に尋ねた。
「俺の写真を見せて『友達だ』って言えばいいよ♪心配しなくても大丈夫!その日はちゃんと俺がいるから」
そう言われて、バス乗車券の代わりにその偉い人と写真を撮った。これ全部マジの話だからね…
無事、帰りのバスに乗れることになって本当にホットした。
ヤルキス、本当に本当にありがとう。
ありがとう以外の言葉が出てこないけど、ありがとう…!
ヤルキスは仕事の合間にバスターミナルに来ていたみたいで、私を助けてくれたあと、すぐにお別れすることになってしまった。
写真も撮らなかった。本当に一期一会の人だった。
涙。感謝。有難う。ヤルキス。
キューバのこと、もう嫌いになんてなれないよ、わたし。
ちなみにバスの乗車券は、割高にはなるがホテルでも手配できたことを後から知った。
だけど、たとえ時間を巻き戻せたとしても、バスターミナルに行かなきゃ経験できなかった、出逢えなかった人にまた逢うために、わたしはまたバスターミナルに行くことを選択すると思う。
(つづく)