メキシコシティに戻ってきました。
相変わらず、お姉ちゃんのお家に居候させてもらってます。
2人分の洗濯がたまりすぎて洗濯バサミで吊るす場所がなくなり、こうゆう感じになりました(笑)
ハレタヒの洗濯って超気持ちいいの。旅の中で一番好きな雑務だなぁ。
さて、これからのプランなんですが、、、
とくになにも決めてなくってですね…(・∀・)←
いつまでメキシコにいるかもわからないし、次の行き先も全然決めてないや。
候補としては、南米のコスタリカか、ラファ達のいるコロンビアに行きたいなって漠然とは思ってるけど、未だ決めかねている状態。
でもね、お姉ちゃんは「いつまでここにいるの?」とか「次はどこに行くの?」とか、私に一切聞いてこないの。
これってね、結構すごいことだと思うんだ。
あたかも、遥か昔から一緒に住んでいたかのようなお姉ちゃんとの暮らしは、本当に何もかもが「温かい」でできている。
心の狭い私にとって、お姉ちゃんの寛大さは時々理解できないこともあるほど底が深くて、世間一般的に見ても「理不尽だ」と思うようなことまで受け入れようとするその姿勢が、初めは全然理解できなかったこともある。
深呼吸をしながら落ち着いて瞑想にふけているお姉ちゃんに、よく横から「そんなのおかしいって!」とピーチクパーチク口を出したこともあるしね ←
20年間務めたジャーナリストという仕事を潔く辞めて、現在は休養中のお姉ちゃんだが、やっぱり生きて行くためには最低限のお金は必要なわけで、そんな背景から現実的な会話だってたくさんする。
だけど、そんな現金な話の行き着く先でも、お姉ちゃんの心と表情に「不安」という類のものはなくて、常に「未来が楽しみね」と微笑むのだ。
そんな穏やかなメキシコシティ過ごす、トアルハレタ日。
この日は朝早くから、ケイコさんとある場所で待ち合わせした。
その場所とは、日本メキシコ学院だった。
前にも少し書いたが、ケイコさんはこの大きな校舎の幼稚舎で日本語の先生をしている。
そんなケイコさんに「先生として働いてみない?」といきなりの申し出を頂いたのだ。
「住みたい」と思えるほどメキシコという国が大好きになっていた私にとって、ここでこんな立派な仕事ができるなら、それはめちゃくちゃ有難いことだとも思った。
だけどそれ以上にまだ、旅を続けて行きたい気持ちの方が強かった。
だから、今回ケイコさんに頂いたこの有難い申し出を前向きに検討する事はできなかったのだが、それでも大丈夫と言って授業を見学させてくれることになった。
幼稚舎から高校まで併設する校舎はとても広々としていて、生徒がメキシカンという以外は日本の学校と雰囲気もそんなに変わらない。
海外の授業を覗かせてもらえるなんて、初めてでワクワクする!
職員室に案内されて、今日一日授業にお邪魔させていただくためのご挨拶をする。
そこには日本人の先生も何人かいて、軽くお喋りもさせてもらった。
そして早速、ケイコさんが担当する朝一番のクラスにお邪魔させてもらう。
メキシカンの子供たちだけど、授業は全部日本語で行い、難しいところだけをスペイン語で噛み砕く。
ケイコさん
「お〜は〜よ〜う〜ご〜ざ〜い〜ま〜す〜」
ケイコさんはクラスに入るドアの前から、隠しものを持っているような可愛い演技を完璧にこなす。
ケイコさん
「今日は、日本から先生のお友達が来てくれましたよ〜!」
ケイコさん
「あいちゃんです!みんな、ちゃんとごあいさつできるかな?」
そう紹介されて教室に入ると、得体の知れないアジア人の登場に口をポカーンとさせた子供たちの表情が一斉にこっちを向く(笑)
でも、ケイコさんが授業を始めると、ちゃんと前を向いてお話を聞き始める。
それでも何人かの子供たちは好奇心を隠せないのだろう、みんなと同じ小さい椅子に座って後方で見学している私をチラチラと振り返ってきては、授業中にも関わらずスペイン語でずっと喋りかけてくる子もいた(笑)
同じ幼稚舎でも、たった一歳年齢が変わるだけでクラスの雰囲気は全然違うので、どのクラスも見ていて本当に楽しいし面白い。
なにより、アジア人の顔をしていない子供達が目の前で日本語を使って挨拶し、日本語で先生の質問に答え、日本語の歌を上手に歌っているのだ。
この子達はきっと、大きくなっても今喋ってる日本語を感覚でちゃんと覚えてるんだろうな。
日本語って、君たちから見たらどんな感じの言葉なの?
大人になっても日本の文化や言葉に興味を持ったままでいてくれるかな?
今思い返せば、子供たちに聞きたいことはいくらでもあった。
だけど、この日この瞬間は、目の前の純粋なエネルギーにただ心を持っていかれるだけで、そんな質問をするどころではなかった。
やっぱり私は先生には向いてないや(笑)
年長さんクラスの授業が終わったあと、私の元に一人の女の子が少し照れながらもニコニコした表情でやって来て、「アリガトウ」と可愛すぎる笑顔を見せながら、小さい体で大きなハグをしてくれた。
数十分前にその女の子の人生に初めて登場した得体の知れないアジア人のわたしに、なんでこんな事が自然にできるんだろう。
その動機は、純粋以外のなにものでもなかった。
この子達は、人を疑うということや人を嫌いになるということを知らないんだ。
その女の子が理由もなく私にハグをしてくれたあと、何故か連鎖反応が起きた。
私の前にあった机と机の間にちょっとした行列ができ、何人かの子供達がとびきりの笑顔と大きなハグを次々にプレゼントしにきてくれたのだ。
愛
「ケイコさん…わたしもう無理(号泣)」
教室を出る頃、嬉しくてたまらなくて顔は笑っているのに目からはなぜか痛いほど涙がポロポロ出てくる矛盾のせいで、せっかくの笑顔がグシャグシャになった。
そんなわたしの顔を見たケイコさんも何故か一緒に涙目になって、「愛ちゃんはやっぱり先生に向いてるよ」と言ってくれた。
さっき子供たちにもらったばかりの感動と涙が止まらないまま、次のクラスに向かう。
ケイコさん
「このクラスは、さっきと違ってすっごくワンパクだから」
そう言いながらドアを開けたクラスは、年少さんのクラスだった。
またドアをこっそりあけて、小声でヒソヒソ感を演じながら、私のことをみんなに紹介してくれるケイコさん。
さっきのクラスでもらった涙がまだ目に溜まったまま登場した私は、どこからどう見ても変なアジア人。
子供たち全員が一斉にこっちを見る。その表情はもう百人十色だ。
年少さんのクラスは、ケイコさんが話す日本語に対して、まだスペイン語で返事をする。
日本語を習っているというより、「日本語を話すメキシカンの先生がいておもしろい」という感じのクラスだ(笑)
年少クラスの子供達はみんな、先生のことを「ケイコ!ケイコ!」と日本では考えられないぐらい気持ちよく呼び捨てにしている(笑)
でも、決して失礼な物言いではなく、親しみのこもった愛称だとすぐに気が付く。
ケイコさん
「ど〜んな色が好きっ?!あかー!!あっかーい色が好きいっ」
ケイコさん
「いっちばんさーきになーくなーるよっ!あっかいクーゥレヨンッ!」
年少さんのクラスは、会話よりも歌やお遊戯がメインだった。
日本でも親しまれている歌を唄い、わたしも椅子から立ち上がり、みんなと一緒に体でリズムをとった。
ケイコさんが子供たちみんなに色ペンを配り、配られた子はイスから立ち上がっていき、教室内に大きな輪ができる。
子供たちは手にもったペンを各々に振りながら、ケイコさんのリズムを真似して踊る。
たまらなく無邪気で、どうしようもないほど可愛い。
ケイコさん
「ど〜んな色が好きぃ〜?」
子供たち
「ぜーんぶぅ!」
ケイコさん
「ぜーんぶぅのいーろが好きぃ〜♪」
歌を歌い終わったあと、みんな椅子から立ち上がったままのグシャグシャな光景で授業が終わった。
と、その次の瞬間だった。
目の前にいた数人の子供達が、私に遠慮なく飛びつきながら抱きしめてきて、私はそのまま一番近くの壁にまで追いやられて倒れこんだ。
子供たち
「キャキャキャ!!!」
クラス中の全員が、次々と容赦なく山のように乗っかっては乗っかりまくって、さらにまた乗っかって、私は何が起きているのかわからないぐらい、子供たちのピラミッドの下敷きになっていた。
ここまで来たら「この一部にならない方がおかしい」というぐらいの勢いで、子供たちの行動にはなんの躊躇もない。
ケイコさん
「あああ!あいちゃん!大丈夫?!」
ケイコさん
「こらこら、降りなさーい」
ケイコさんの心配する声が聞こえ、下敷きになった状態から爆笑して起き上がった。
愛
「・・・大丈夫もなにも(号泣)」
こんなにも凄まじい無垢で美しいエネルギーを、こんな得体のしれないただの旅人の私がもらっていいんだろうか。
わたしはその場で今日何度目かの大号泣をした。
子供達の無邪気さと猛烈なアタックに、心からの笑いと感動が止まらなかった。
授業風景の動画や写真はSNSには載せないでねと注意されたので、写真は全てボカしました。
ピラミッドになった時、ケイコさんが咄嗟に動画撮影してくれたみたいなんだけど、なぜか撮影できてなくってこの一枚の写真だけがフォルダに残ってたそう(笑)
だけど、この不意打ちすぎる一枚がもう宝物すぎてやばい。
この子達にとって、私が「アジア人」であろうが「旅人」であろうが「その他何者」であろうが、なんの関係もないのだ。
この場所に一緒にいて、恥じらいも何もなくただ一緒に楽しむことができる同士という以外に余計なことを何も考えていない、そんな気がした。
こんなに素敵な経験を与えてくれたケイコさん、本当にありがとう。
そしてケイコさんを紹介してくれたお姉ちゃんにも、感謝しか出てこない。
Muchas Gracias.
(つづく)