Keep me by your side「宇宙はわたしが選ぶ道を知っている」

ぐ〜。

ぱちっ。

みんな、おはよう〜!今日も優しい陽が差し込むコーテズからだよ〜。

今日は嬉しいお知らせがあるよ!

今朝いきなりやってきたこの大きいトラック、なんだと思いますか??(・∀・)

コナーも、見慣れぬ車の登場を窓からじっと見守っています。


「ジミー!誰か来たよ?あのトラックなに?(・∀・)」

ジミー
「あぁ、Wi-Fiの工事だよ。今日から家でネットが使えるようになるぞ!」

なんと!!!お湯やトイレよりも先に、Wi-Fiがお家にやってきてしまいました!爆笑)

すごい!いっきに現代社会へワープだ。

でも、家が原始的過ぎるのか、工事の人も手こずっている感じでした(笑)

さて、今日は水道管(排水管)を作る予定だったんだけど、備品が足りなかったので、インソレーションという保温材を敷き詰めて行く作業を先にすることになりました。

隙間風を防ぎ、お家の保温性を高めて暖かくするため、雪国ではとても大事な作業です。

作業場所は2階というか屋根裏で行います。ハシゴを使って上がるよー!

今日も相変わらず、一日中ずっっっと激しく動き回っているジミー。

激しいを通り越して、時々男の怖さを感じてしまうぐらい荒々しいことさえある

ジミーは、純マスキュリン100%な性格で、女心だとか、ロマンだとか、そういう繊細なものに対する理解ができない人。

そして、本人も自分でそれをわかっている感じだった。

私は大人になるまで、世間一般から見ると気狂いにも思えるほど破天荒な父と兄2人、そしてその多くの同僚達に囲まれて育ったこともあって、たくましい男性の姿を見ながら育った記憶が濃い。

家の壁がなくなってしまうほど激しい喧嘩を繰り広げる兄達の姿も近くでずっと見てきたし、女の私や母じゃ止められなくて、家に警察が来る事だってあった。

私が中学3年生の頃、勉強しないで遊んでばかりいると、お兄ちゃんは怒って、私の学習机を素手で破壊しはじめたこともあった。

ジミーの手

もちろん、それがお兄ちゃんが私の将来のためを思ってやってくれた愛情の裏返しだったことはわかってる。

それに、「机こわされちゃったらマジで勉強できないじゃん!(・∀・)」って、今となっては笑い話でもある。

そんな破壊的な男の姿を幼い頃から見慣れてきているはずの私でさえ、「あ、怖い…」と思っちゃうこともあるほど、ジミーは突然すごい覇気で怒声をあげることもあって、たまに一緒にいるのがしんどく感じることもあった

でも、こうして家を作ることに関しては別だった。

私が側でジミーの作業を見ていても、嫌な顔をせず、私が興味を持った分だけ説明や答えを返してくれる。

それに、不器用な性格ながらも、女の私に手伝えることと手伝えないことをちゃんと判別してくれる。

そんなわかりやすいジミーのことが、私は嫌いじゃなかった。

不器用だけど、優しい人だということをちゃんとわかっていた。

この保温材を敷き詰めていく作業は、アレルギーで肌が痒くなることがあるから手伝いはいらないとのこと。

いや、、、、ってゆうか手伝えないと思う!

だって、足場が薄っぺらい板だけなんだもん!怖)

行きたいところにその板を移動させて、一時的な足場を作って小まめに移動する感じ。


「ジミー!超怖い!床抜けないかな?!」

ジミー
「大丈夫だろ!俺の体重でもなんともないんだぜ?ほら!」


「野生か!笑)ありえない!わたし下に戻る!外で遊んでくる!」

旅人を受け入れるのが好きなジミーと偶然出逢い、2人+2匹で過ごすこのカントリーな生活も、既に4日目に入ろうとしていた。

コーテズという場所に訪れるだけでも特別な経験になるだろうに、なんのおもしろい因果に当たってしまったのだろう。

旅って、、、

人生って、、、

本当に、、、

その先に何が待っているのか、扉を大きく開いてみないとわからないことだらけだ。

こんな美しい景色のど真ん中に建つ原始的な家で、家を自分たちで創る日々を過ごすことになるなんて、日本から何も考えずやってきた旅人の私に、どう予想できた?

暖炉のための薪を斧で割り、家の中へ運ぶところから始まる生活。

水道が家の中にできるまで、近くにこうして水が汲める場所があるだけで有難いと思える生活。

外で遊ぶといえば、雪だるまを作るか、、、

新雪のキャンパスにお絵かきするか、、、

コナーと雪の上で追いかけっこして遊ぶ、超自然なライフスタイルが楽しくて仕方ない。

そんな自然と共に過ごす楽しみは、日が暮れてもなお続いた。

夕方は家の前で太陽を見送るのが日課になっていた。

左と右を交互に見渡すと、まったく違う空色を見せてくれる。

これは右側の空。夕陽が沈んでいく西なのでオレンジ色に染まる。

それと引き換え、同じタイミングの左側の空は、いつもこんなピンク色に染まっていた。

カメラのレンズに収まらないほど自由奔放に広がるコーラルピンクの空を見る方が私はなぜか好きだった。

この色が、優しく遠くに流れて溶けていくまでずっと、空を見て夕方を過ごした。

そして夜。

家の周りが真っ暗になると、キラキラと夢に満ち溢れた、たくさんのあの子達が一生懸命姿を輝かしながら夜空に現れる。

そう。無数の輝く星達。信じれないセカイ。

もうここまで来れば、ギャラクシーだよ。宇宙だよ。

わたしは今ちゃんと、宇宙の中でこうして生きてるんだ。

初めて見るこの宇宙の中で呼吸をすると、もう感謝と涙しか溢れてこなかった。

夜の気温はマイナス20℃。

どんなに寒くて手が凍りそうになり鼻水が垂れてきても、構わず外でシャッターが降りる数十秒を待った。

でも、カメラの画面に映った写真を見て、今自分が持っているスキルとカメラの限界を感じてしまう。

こんなもんじゃないだろ。

もっともっともっともっと綺麗なはずだ。

絶対こんなんが限界じゃない。

この時わたしは、この宇宙をもっともっと綺麗に残したいと後悔にも近い心で、「次はもっともっと良いカメラを買って旅しよう」と強く決めたんだ。

もっともっと美しい写真を撮れるようになってやると、なんの迷いもなく決めたんだ。

その決意と同時に、わたしは気が付いた。

それは、わたしの旅がこれからも続いていくことが必然的にこの星の下で決まっていたということ。

星降る街コーテズの家とはまだ呼べない古屋で、私が見た信じられないほど美しいセカイ。

もうこれ以上「感動」という類のものが心に入り込む余地がないほどに、特別なものを膨大に与えてもらった。

それなのに、、、、

コーテズがわたしに与えてくれた「キセキ」は、まだ終わらなかった。

(つづく)