なにも探さなくていい、そのままでいい

新しい年を迎えた翌日。

みんなでランチを食べたあと、目の前で無邪気に遊ぶ兄妹があまりにも美しく絵になっていて、その神秘的とも思えた光景を見つめながら、心に色んな想いを巡らせていた。

お父さんの背中を見て、医者を目指しているサトシ。
海外に出て、人の役に立つ仕事がしたいというナツ。
そしてこの美しい人間をこの世界に創ったケイコさん。

本当に美しいものを見ると自分も心が洗われるあの健やかなで微笑ましい気持ち。

その気持ちの最上に到達したとき、自分の中にその気持ちをどう取り込むかというところで、人はきっとつまづく気がする。

ケイコさん
愛ちゃんの夢はなに?

目の前で自然体に動く美しい兄弟を見ながら感じた、ありのままの気持ちをケイコさんに伝えたあと、ケイコさんから返ってきた突然の質問だった。

メキシコシティの由緒ある幼稚舎で、日本語の先生をしているケイコさんとの会話はいつも日本語だった。

英語よりも日本語のほうが堪能だけど、それはもちろんネイティブの領域ではない。

日本語が世界ではどれだけ難しい言葉なのか、海外に出ると本当によくわかる。

それでも私はケイコさんには伝えたかったから、標準語のゆったりと感覚をあけた日本語で自分の想いをまっすぐ伝えた。


「わたしは昔から特にこれといった取り柄もなくて、バカだし、高校卒業してから短大も辞めてすぐに働きはじめたんです。旅をしながら何がしたいのか、ここ数年探しているけど、旅していると本当に凄い経歴や経験を持つ人ばかりに出逢って、その度にコンプレックスを感じてしまう自分がいるんです。わたしもその人たちみたいに何か本当にやりたいことを見つけて没頭したいけど、見つからないんです…」

本当は「でも、、、」と付け足したしたい気持ちだった。旅の中で経験して学んだ「ありのままの自分でいて、好きなことを追いかける人生でいい」という想いには辿り着いていることを付け足したかった。

でも、その感情を常に強く持ち続け、年齢も社会もお金も恥も、なにも気にせず度肝を抜くくらい突っ走っていく強さがなくて、中途半端に甘えた旅人のままなんです、、、というところケイコさんに伝えたかったが、ケイコさんが混乱するんじゃないかと思って、先の言葉までで止めた自分がいた。

でも、次の瞬間。

ケイコさんからもらった言葉に、私の涙腺は歯止めが効かなくなった。

ケイコさん
「探さなくていいよ。愛ちゃんはそのままでいい。すごくシンプルだから」

ケイコさん
シンプルってすごく良いことだよ。だってメキシコでメキシカンの私たちと一緒にいても『あれが必要、これが必要』って言わずにコミュニケーションとって楽めるでしょ?無理に外に何かを探しに行かなくてもいいの。実はもう自分の中にあったりすると思う。だから今まで辿ってきた道の中からできることをやったらいいよ

途切れ途切れの日本語の単語を丁寧に繋いでは、一生懸命に文章を作って伝えてくれたケイコさんからの想いに涙した。

ケイコさんは、何故かいつも困ったような、心配したような、控えめな表情で人と会話をする。

私みたいにバカ笑いもしないし、大きな声で言葉を発したりしない。

自分の弱さを決して見せないケイコさんだけど、数日過ごした中で何回も何時間も会話して、過去にきっと大きな傷を得たんだろうなっていうのは私なりに感じている。

そんな過去を乗り越えた今のケイコさんの表情、空気、この優しすぎる話し方、、、そのすべてが心に染みて、もう泣かずにはいられなかった。

ナツがプールから上がってきて、泣いてる私の状況なんてわかってないはずだがこう言った。

ナツ
大丈夫よ。わたしもうあなたのこと好きよ

まだ大学生のナツに、大先輩のような言葉をサッパリ投げかけられ、思わず笑ってしまう。

今はね、真っ白なキャンパスに描けるかもしれないぐらい明瞭にいくつかのやりたいこと、欲しいもの、未来像が湧き出てくる瞬間にも出逢ってる。

このブログも描いていることも、そのうちの1つなの。

真っ白の状態から始まって、自分のペースだけど、ここまでなんとか深く描き込めてこれた。

これからもいっぱい描くし、足すし、創り出すし、ときにはまた外を探しまくるのかもしれない。

「自分らしく生きるというわたしの生き様」が誰かの役に立てるようになれれば、そんな幸福なことはないと願いながら。

アメリカから旅をはじめて、もうすぐ2ヶ月が経つ。

たった2ヶ月だけど、わたしは本当にたくさんの人に出逢えて、いろんな人間の形と愛の形をみてきたけど、ここメキシコほど「無償の愛」に溢れている場所は初めてだ。

長年、日本で形成された自分の荒んだ心や考えが恥ずかしくなって、どんなけ落ちこんだりもしたか。

だけど最終的には、メキシコで学んだ「愛」に、わたしの凝り固まっていた性格や考えを救ってもらうことができた。

そして、私が本当に心からやりたいことは、きっと自分一人ではできない「ご縁」なものだから。

日頃の行いをよくし、ポジティブに信じて生きるしかないと今は思ってる。

へっくしゅんっ!

(つづく)