フェイさんに全身全霊で感謝を伝えてお別れし、私はまたレイモンドと合流した。
レイモンド
「愛〜、Facebookの知人が連絡つかなくて会社案内するの無理かもしれない」
愛
「レイモンド、私もう十分だよ!」
Facebookに行きたくないわけじゃ、もちろんない。
だけど、これ以上何か新しい感性だとか奇跡に近い出来事を受け入れるスペースはもう残っていなかった。
それはチャンスを逃している感覚ではなく、もうこれ以上欲張らなくていいと心が脳に教えてくれている感じに近かった。
サンフランシスコについて、アメリカ人は本当にオーガナイズ精神が強いことを知った。
オーガナイズというか、ギバー(Giver)というのかな。
レイモンドは翌日までずっと、私のためにFaceBookで働く知人にアポ取りをしてくれたそうだが結局予定は合わなかった。
そして申し訳ないからと、車で自分が知ってる範囲でFaceBookの敷地を案内してくれた。
レイモンド、あなたとサンノゼで出逢わなかったらこんな貴重な体験に巡り合うことはなかった。
本当に本当にもう感謝でいっぱいだよ。
そしてレイモンドとお別れするとき、私は出逢ってからずっと不思議に思っていたことを彼に聞いた。
愛
「なんで出逢ったばかりの人間にこんなにもあっさりと良くしてくれるの?」
もしも私が変な旅人で、レイモンドの大切な友人に失礼とかしちゃったら…ってレイモンドは1mmも考えなかったのかな。
アメリカンはそんな小さいこと考えない人種なのだろうか。
レイモンド
「・・・・」
レイモンド
「う〜ん」
レイモンド
「なんとなく〜!!!」
レイモンド
「愛は本当にラッキーだね〜ぇ!!!はっはは!笑」
なんじゃそりゃ!!!Σ(゚Д゚;)
愛
「あっははは!!!爆笑」
愛
「レイモンドってやっぱり面白いね!!!笑」
愛
「あとね、さっきからもうひとつ気になってたことがあるんだけど・・・」
愛
「レイモンド、社会の窓ずっと開いてるよ〜!大爆笑」
レイモンドは大慌てでジーパンのチャックを閉めながらピョンピョン跳ねて大爆笑した(笑)
あ〜おっかしい!!!お腹痛い(笑)
愛
「レイモンド!本当に本当にありがとう!!!」
愛
「次会った時はまた職業のこと詳しく説明してね!笑」
レイモンド
「あはは!OK!次こそだね!笑」
レイモンド
「またね!愛!」
アメリカ横断を始めてまだ4日目の夕方、もう夢のような素敵な思い出を抱えながらレイモンドとお別れした。
秋に訪れたサンノゼの街で、優しい風と、偉人達が作り上げた雄大な街と、温かい人々に出逢うことができた。
サンノゼからサンフランシスコに戻った頃にはもう夜になっていた。
治安が良くないと言われているオークランドを夜に歩くのは絶対避けたかったので、Uberで宿まで帰ることにした。
するとなんと奇遇なことか、Uberで私をキャッチしてくれたのは、レイモンドと同じく中国系アメリカンのリーさんという優しい男性だった。
色が白くて目がクリクリしている雰囲気もレイモンドによく似ていた。
サンフランシスコに戻ってくると急に力が抜けたように空腹に襲われた私は、リーさんに「なんでもいいからドライブスルーに寄ってもらえますか?」とお願いした。
車の中でサクッとご飯を食べようと思って近くに見えたマクドナルドに入ってもらい、そのまま車から適当に注文する。
そしてお金を払おうと助手席から手を伸ばすと、リーさんが急にわたしの手をペチンと叩き「NO!中国では男が女にご馳走するのが当たり前だ!」と私より下手くそな英語で真剣に言ってくる。
いやいやいやいやここはアメリカやし!
「リーさん!私はただの乗客だよ!それにこれは私のご飯だから!」と、こちらも引き下がらずお金を窓から差出そうと身を乗り出すが、リーさんは全然引き下がってくれない。
それどころか相変わらず私の腕や手をペチン!ペチン!と叩いて「ノー!」の一点張り。
そしてついにリーさんのクレジットカードが店員さんに受けとられた。。。
なにこれ意味わかんない。
意味わかんないけど、もうすごく嬉しいよ。
もうね、有り難くご馳走になることにした(泣)
マクドナルドだけど「めっちゃ美味しい!」とリーさんに笑顔で言いまくった。
その後、リーさんは有名なゴールデンゲートブリッジにも連れて行ってくれた。
私とリーさんの間にあったUberのメーターはいつの間にかもう止まっていた。
りーさんはアメリカに住んでいるのに英語が全然上手じゃなかった。
それでも家族や二人の息子さんの写真を見せてくれたり、ジャスチャーや単語だけで伝えようとしてくれるリーさんが子供みたいに純粋で、私は彼の助手席で爆笑の嵐だった。
車がオークランドに入り、私が泊まってる宿の近所を走りながら「愛はなんて危ないところに泊まってるんだ!俺の家においで!」とすごく心配してくれたりもした。
でも「明朝にはサンフランシスコを発つから大丈夫」と笑って伝え、私は助手席をおりた。
リーさん、相変わらずお茶目に元気に過ごしてるかなぁ。
アメリカに来て本当に予期せぬ出来事が多すぎて心の中が全然整理できないまま二段ベッドに寝っ転がった。
心が満タンで現実と夢の境目がよくわからなかった。
興奮が鳴り止まず、ベッドに横になってもすぐには眠りの世界に行けなかった。
シリコンバレーで起きた奇跡とみんなの優しさが、未だ心から細胞に向かって私を振動させるのだ。
もうサンフランシスコに思い残すことは何もない。
なんの迷いもなく次の目的地へと向かおう。
サンフランシスコで私と出逢ってくれた全ての人と出来事へ、愛を送ります。
(つづく)