欲望の街ラスベガスで金髪マッチョに押し倒されて候

ラスベガスの旅記を書き始める前に、2017年10月1日ネバダ州ラスベガスのストリップ地区で起きた信じられない銃乱射事件の被害者様とその親族様へ、心よりご冥福をお祈りいたします。

 

アリゾナからラスベガスまでは、Phoenix Mesa Gateway空港から格安チケットを買えたので飛行機でやってきた。

アメリカ大陸は空よりも大地を走りながら旅する方が感動的だってこともわかってるんだけど、レンタカーを目的地で乗り捨てるコストが意外にも高かったりする。

中古車を現地で買って最終目的地で売るロードトラベラーもいれば、ヒッチハイクや自転車、究極は徒歩で旅をする強者もいる中で、まだまだ自分の旅スタイルは冒険の枠を突き抜けないな〜と思ったりもする。

だけどローカルの人と深く関わりながら進めているとは思うから、そこを大事にしていればきっと自分らしいスタイルは後から付いてくると言い聞かせてマイペースに旅をしていこう。

そんなことを考えながら、大自然派の私があえてラスベガスにやってきた目的は三つある。

・デスバレー国立公園に行く
・シルクドゥソレイユを見る
・有名なホテルの噴水ショーを見る

デスバレーとは、ひとことで言うと超大荒野!夏になると世界一暑くなることから「死の谷」とも呼ばれている。

「アフリカを超えて世界一の暑さ!?それになんていう静寂かつ壮大な場所なんだ!」と写真を見てから行きたい好奇心が湧きまくった。

サンフランシスコからだと車で片道8時間、セドナからだと7時間くらいかかるのだが、ラスベガスからだと2時間で行けてしまうのだ!

当初はサンフランシスコから誰かと車をシェアしてラスベガスに向かおうと、外国人の女の子グループと話してたんだけど、諸々のスケジュールが合わなくて断念。

そして、旅人の掲示板で「ラスベガスからデスバレーに行ってくれる人」を募集してみたところ、日本人男性が早々にメッセージを返してきてくれたのでレンタカーを割り勘して行けることになった!やりとりも日本語だから計画が進むのも早い早い(笑)

そんな感じで飛行機であっという間にラスベガスに到着!

もう空港からカジノ!どこでもカジノ!ゲーセン感すごい!

これは空港じゃないけど

わたしはラスベガスでも現地に住む人のお家に泊まらせてもらえることになりました。

どんな人だろう!ワクワクするなぁ。

夕方空港について、ホストさんにと連絡すると「今仕事中だからここに来て」と場所が送られてきたので、Uberを使って空港から10分くらいのその場所に向かった。

ラスベガスは派手だけど小さい街なので、マッカラン国際空港から街へ出る距離も車で10分くらいなの!助かるー!

さぁ、ホストさんと初めましてのご挨拶です!

うん、写真で見たとおりのマッチョボディにクリアブルーの瞳を持つ金髪の外人さん。

世間ではこうゆう見た目を「イケメン」とゆうんだろうというヤンチャで今時の若い男の子って感じ。

年齢も私より5歳ぐらい下だったかな?

「仕事があと30分くらいで終わるからちょっと待ってて」と言われ、ここにいても暇だしな〜と思い、大きい方のバックパックだけ職場で預かってもらいベガスの街を少し散策してみることにした。

すると早めに仕事が終わったみたいですぐに連絡が来て、そのまま彼のバイクで家に向かうことになった。

「ラスベガスでバイクに乗れるなんて!」と素直に興奮しながら、私の大きいバックパックも器用に積んで運転する彼。

車だらけの道路をハイスピードでスイスイ走り抜け、あっとゆう間に彼の住むアパートに到着した。

家賃の高そうな敷地を歩き、玄関を開けると、ソファの横に女の子の荷物(ハイヒール)が置いてあったので少し安心する。

そして私も自分の持っていた重たい荷物を適当に置かせてもらい、彼の綺麗なアパートの中をゆっくり見て回った。

すると彼の部屋の方に少し気になるものが置いてあったので「これ見ていい?」と入らせてもらった。

その瞬間、彼がグワっといきなり私をベッドに押し倒してきてこう言った。


俺、アジア人の顔が一番好きなんだ

そのまま勢いでキスされそうになったのを必死で回避する私(!)


「うううううううぇぇっぇぇいっ!(Wait!)」

ベッドの上を転がるように逃げることに成功したはいいが、いやいやあかん!!!

これはあかんだろ!!!!!!Σ(゚Д゚;)

私は急すぎる展開についていけず心臓がバクバクした(!)


「ちょっと待って!そんなつもりまったくない!」

私は彼に「セックスに興味がない」ことをはっきり告げ、とにもかくにも彼の部屋を出て自分の荷物を置いた場所に戻った。

すると彼はそのままドアをぺシャリと閉めて部屋にとじこもり始めた(多分G行為かと…)

私は私で平常心を探しながら、またこんなことがあっても自分なら大丈夫だ、それほどのことでもなかったはずだと頭の中を整理したが、心臓がはまだバクバク言っている。

私はただ、セドナのときみたいに彼とも仲良く友達になりたいだけでエッチなことがしたいわけじゃない。

それに彼が好きだというアジア人を代表して、アジア人が尻軽なんてイメージを植え付けてたまるか!断固!

でもまたあんなシチュエーションになるんじゃないかと毎回ドキドキするのはしんどいなぁ、、、

早く誰か他の女の子が帰って来てくれないかなぁと思いながら座っていると、彼が部屋からでてきて、何事もなかったようにこう言う。


「外に行くぞ」


「え?あ、はい(・∀・;)」

なんなの?と考える秒も与えられず、私はパソコンだけ抜き取ったカバンを背負い、勢いよく玄関を出る彼にそのまま着いて行った。

そんなわけのわからない彼が連れてってくれたのは、ラスベガスに来たら絶対見にこなきゃいけない有名なフリーモントストリートエクスペリエンスだった。

ここにいる観光客はみんな頭からサングラスを落としちゃうくらい頭上をずっと見上げてる(笑)

そして彼は、カジノにも案内してくれたり、横で軽く勝負するのを見せてくれたり、1000億円も見せてくれたり。

さらに「あれはあれでこれはこれで」と説明もしてくれたりする(驚)

数十分前ベッドに押し倒されたことが嘘だったかのように親切にラスベガスの街を案内してくれる彼と、普通に楽しいし嬉しい私。

そんな彼と一緒に歩いていると急にこんな質問が飛んできた。


俺が好意を持つとアジア人の女の子はみんな逃げていくんだけど、なんで?

うむ。なかなか良い質問だ。


きっと本気じゃないって伝わるからだよ?

そう答える私と彼の間にそれ以上会話が展開することはなく、私たちはただ夕方から夜に変わりゆくベガスの街を歩く。

「温かい心」というのは彼の中に必ずある。

私をこうやって迎え入れてくれ、街を案内してくれ、会話をしてくれるんだもん。

でも心を「通わせる」とか「開ける」という概念は彼のどこにもないことを、夜風のひんやりした冷たさを肌で感じるのと同じぐらい敏感に感じる。

陽が落ちても明るいベガスの街で、彼が最後に私を連れて来てくれたのは高級ホテルの屋上から見る夜景だった。

数あるホテルの中でも、ここは彼の知る穴場なんだろうか?人は誰もいなかった。

月も綺麗だった

さっきまで冷たいと感じていた風がいい感じに気持ちよくなってきた頃、そういえば今日は自分の誕生日だったことを思い出した。

数時間前までいたセドナとは真反対の景色を眺めながら、人生の変化の速さに思考が少しストップする。

例えようがなかったほど美しすぎたセドナの絶景はここには1mmも存在しないが、それでも誕生日にこんな特別な場所に連れてきてもらえたことは素直に嬉しく思えた。

だけど目の前にあるこの電飾が魅せる甘い派手な感動は、夜眠ってしまえばすぐに忘れてしまう「一時的なもの」だということが、考えなくてもハッキリとわかる自分がいた。

不思議だね、一人で放浪しながら色んなものに触れていると、もう考えなくても「美しさ」や「本物」が直感的にわかるようになる。

彼から少し距離を置いた場所でそんな事を考えながらボーッと夜景を見ていると、彼が突然私の肩に手を回しながら近寄ってきた。

そこまではいいが、手は腰に移動し、さらに飛躍してお尻に移動しそうになる。

手が下がりきる直前でヒョイっと回避し、彼に「行く?」と伝えた。

なかなか上がってこない高層ホテルのエレベーター前で彼が少しイライラしていたのがわかった。

私たちの横には、ちょうどこのホテルで結婚式の二次会が終わった参列客がたくさんいて、順番にエレベーターを使用している様子。

たまたま、二次会に出席していた女性が満面の笑顔で「このふたり今日結婚したのよ〜!」と私達に幸せのお裾分けをするように話かけてきてくれた。

私は「わぁ!おめでとう!」とお祝いの言葉を極自然に返す。

だが彼はアゴでうなずくだけで笑いもせず、満面の笑みの人達に対して何も言わなかった。

わたしは彼の心の有りかを疑った。


「なんでおめでとうって言わなかったの?」

もうその場で聞かずにはいられなかった。


「なにが?」

相変わらず何も起きていなかったような反応でそう返され、もうそれ以上何も彼に問いかけようとは思わず無言を装っていると、彼が少し時間を開けてこう言った。

ホストさん
「俺がなんで車じゃなくてバイクに乗ってるかわかる?我慢するのが嫌いなんだ」

目を合わせずにそう言葉を発した彼は、目の前に表示されるエレベーターの数字の変化をただ静かに冷たく見つめていた。

いったん私を家に送り届けてから、彼はまた友達とどこかに遊びに出かけたようだ。

数時間後、帰ってきたので「おかえり」と伝えたが、彼はまだ冷たいままで目も合わせてくれなかった。

私は「彼という人間」が全然わからなかった。

なんでラスベガスを案内してくれた?
なんで夜景を見に連れてってくれた?
でも結局冷たくなるのはなんなんだ?

リビングのソファで横になりながら、今日出逢ったばかりの彼との間に起きた出来事を整理することもできず、、、

私はそのまま旅の疲れに任せて寝落ちした。

朝方、私の他に泊まっている旅人の女の子がようやく帰宅した。

そうか、ラスベガスは夜の街だった。

朝帰りが普通なんだと、このときはじめてラスベガスという場所と、ここにいる人達のライフスタイルを理解しはじめた。

帰ってきたのはマルガリータとゆう背の高いロシア人の女の子で、ラスベガスでおすすめのクラブや他にもいくつか面白い場所のことを親切に教えてくれた。

そのついでに、ここのホストさんと仲良くなるための攻略法はないか聞いてみようかとも思ったけど、マルガリータもあまり彼と仲が良さそうな気配がなかったのでやめておいた。

ラスベガス初日でいきなりこんな感じだ。

難しい性格だけど時々優しいホストさんと全然仲良くなれそうにないわたし。

でもやっぱり仲良くやりたいよ。

無料で泊まらせてもらいたいって理由だけでここに来たんじゃない(もちろん大事だが!)

さぁいつまでラスベガスにいようか、あんまり長くはいたくないかな。

だけど相変わらず次の行き先も決めてない(笑)

ってかまだ来たばっかだしね!楽しまなきゃ!

(つづく)