クリスマスパーティー当日。
朝早くからトリーシャがバタバタと準備を初めていたので、私も一緒に手伝った。
チキンを焼いたり、食器を出したり、テーブルと椅子を並べたり。
結構たくさんの人が来るそうなので、必要のない家具や荷物は二階へ運んだりもした。
愛
「わたし、お寿司つくろうか?」
ジョン
「わお!それはいいね!みんな喜ぶよ!」
日本から来たわたしにできそうな提案にジョンは快く賛同してくれて、車で30分ぐらい離れたアジアンマーケットにわざわざ連れていってくれた。
VeganやVegetarianのゲストも何人かいるので、サラダ巻きのようなお寿司を作ろうと私が選んだ具材は、たくあん、アボカド、コーン、きゅうり、肝心の魚はツナだけ。
もちろんマヨネーズも卵不使用のビーガン用を選んだ。
たくあんとゆうものを人生で初めてみたジョンは、パッケージの裏にある成分表を不思議そうに眺めていた(笑)
手巻き寿司がとりあえず楽しめそうな具材を一通り手に入れた私たちは、家に戻って、まず酢飯を作るために買ってきた米の袋をあけた。
するとなんと、白いお米の中に黒いプツプツが大量に発生している(恐)
愛
「ひぇ〜!!!むむむむ虫〜!」
米の袋から慌てて逃げる私に気付いたジョンは、勇敢にもそのグロテスクな米の袋から虫だけを取り除こうと試みるのだが、手作業でどうにかなるレベルじゃなかった。
でも米がなければお寿司は作れないので、私たちはもう一度車を走らせて別のスーパーへ行くことになった。
だが、寿司に使えそうな日本米がなかなかなくて、気付けば三軒もスーパーをハシゴしていた。
愛
「ジョンごめんね?私が買う時にちゃんと確認してれば…」
ジョン
「いや、あれは俺もにもわからなかったよ」
そんな会話をしながら駐車場へ歩いていると、ジョンが申し訳なさそうな顔をする私のお腹に「チョップ!」と手を入れて、長身の上半身を折り曲げながら私の顔を覗き込むように微笑みかけきた。
愛
「・・・・・」
なんだろう、この気持ちは。
ジョンといるのが素直に楽しくて、なんかヤバイ。
そんな経緯がありつつも米を再調達し、夕方からクリスマスパーティーが無事始まりました!
続々と集まるジョンとトリーシャの友人達、仕事が終わってから来る人もいたので写真よりももっと増えて行きます。
わたしが振る舞った手巻き寿司コーナーも大好評でした!笑)
「あなた!コレどうやって作ったの?!すごいわ!」
って凄くびっくりされたんだけど、米炊いて、酢入れて、混ぜて、具切って、巻いてるだけなんだよな…(苦笑)
こんなに楽しんでもらえるなんて!こっちが嬉しくなっちゃう!
ジョンは人生初めての「タクワン」がめっちゃ気に入ったらしくそのままボリボリ食べてた(爆笑)
たくさんいた人の中で、私にすっごく親切に喋りかけてくれたカーラという女の子。
韓国で英語の先生をしてたことがあるから、アジア人と喋るのに慣れてるんだって!
リボンヘアがめっちゃ上手だったから写真撮らせてもらった♡
あと、空から舞い降りてきたような天使もいました。
超イケメンの黒人パパと、透明感のハンパない白人ママの良いところだけをもらって産まれてきたんだね(感動)
ママさんは現在2人目を妊娠中♡そんなママのお腹をパパさんはずっと撫でてた♡
なんて絵になる美しいファミリーなんだ。
そしてプレゼント交換の時間に!赤いタンクトップ来た人がトリーシャでジョンのルームメイトさんだよ!
残念ながら、トリーシャとはあまりゆっくり話せなくて仲良くなる機会がなかったんだ;
プレゼント交換が盛り上がってる後ろで、わたしはちょっと遠慮しながら天使ちゃんに遊んでもらってた(笑)
そんな私が引いたクリスマスプレゼントは、キリストの体に有名なバスケットボール選手の顔が貼られた巨大キャンドルだった!笑)
愛
「これ旅に持ってけな〜い!」
そう笑ってたら、シャンプーと石鹸を当てた男性が快く交換してくれました(笑)
NASAに行くためだけにやって来たヒューストンで、こんなにも素敵な経験をさせてもらえるなんて1mmも期待していなかった。
ジョン、トリーシャ、こんなにも温かいお宅に迎え入れてくれて、本当にありがとう。
さて、この流れで書くのはちょっと寂しいものがあるけど、このまま「ジョンとの別れ」についても書いてしまうね。
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パーティーの翌日。
後片付けを手伝ったあと、私は借りている部屋に独りでいた。
ベッドと自分の荷物だけがあるこの部屋に、特別何か用事があるわけでもなかった。
だけど、どうしても部屋から出られなかった。
ここにいられる時間はもう24時間を切っていた。
日付が変わった午前4時には、また新たな場所で新しい旅が始まる。
ここヒューストンで、ジョンがくれた素敵な時間と思い出。
5日間この家に泊めさせてもらって、本当にたくさんの時間と心をジョンと共有した。
でも、今からその全てにお別れしないといけないんだって思うと、心が強く傷み始めて、ジョンを見てしまうだけで泣きそうだったのだ。
そんな気持ちで独り部屋に閉じこもっていると、ジョンがドアの前に立ち止まって声をかけてきた。
ジョン
「愛、何してるの?」
愛
「映画見てるの!」
そう普通に答えたわたし。
ジョン
「もうちょっとしたらアートギャラリーに行くけど、愛も一緒に行かない?」
愛
「・・・・・」
愛
「ごめん、今日はこの映画見たいからトリーシャと楽しんできて!」
ジョンは何かに気付いたような顔で薄く笑い、ドアの前からいなくなった。
私は中途半端に半開きにしていたドアをパタンときっちり閉め、ベッドに潜って、心にある切ない感情と共に落ちた。
そのまま寝てしまったけど、数時間後、ジョンからのメールで目が覚めた。
ジョン
「今から行くけど本当に行かないの?」
私は返事もせずに、また無理やり寝ようした。
いつのまにか夜になり、またジョンからメールが来た。
ジョン
「今スーパーにいるけど何か欲しいものある?」
愛
「昨日のパーティーの残り物がいっぱいあるから大丈夫、ありがとう」
ジョンがもうすぐ家に帰ってくる。。。
なるべく顔を合わさないで済むように、サクッと昨晩の残り物をお腹の中にいれて、また借りている部屋のドアをパタンと閉めてベッドの中に潜って落ちた。
愛
「・・・・・・」
わたしは一体なにをやってるんだ。
このままジョンの顔も見ずにお別れするつもりか?
そんなのありえない。
でもどうしていいかわからない。
ほんとガキ
大人になれない
寂しくて笑えない
旅のプランも、ヒューストンに5日間いると決めたのも、次の行き先のフライトを買ったのも全部自分だ。
全部私が自分で決めたことじゃないか。
ここにもっといようときっと思えばいられるのに、そうしないのも自分が自分で決めたこと。
ここまでの旅路で何人ともお別れをしてきたが、こんなに涙が出るほど心が痛いお別れはこの時が初めてだった。
私は、ジョンに恋してるんだろうか?
もしそうだとしたら、なおさら私は先に進まなきゃ。
だってもし私がジョンに恋をしているとしたら、、、
ここに私が欲しい未来はきっとないから。
それはジョンと過ごした時間の中で自分なりに感じた。
そんな事をベッドの中でうずくまりながら考えているとコンコンとドアが静かに鳴った。
優しくドアを鳴らしているのは誰でもないジョンだとはっきりわかっていた。
私が返事をするかしないか決める前に、ジョンはドア越しに喋り始めた。
「愛、本当に良い出逢いだった、ありがとう」
「これからも愛の旅を見たいし、たまに連絡とりあったりもしたいんだけどどうすればいい?」
その言葉を聞いた瞬間、私はドアを開けて心を隠せないまま、ジョンに強く抱きついていた。
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ジョンとバイバイした早朝4時はまだ外は真っ暗で、土砂降りの雨だった。
ジョンは朝までずっと一緒にいてくれて、玄関を出てUberに乗り込む最後の最後の瞬間まで見送ってくれた。
重たいバックパックを前後に背負うと、不思議と私の目からもう涙が出ることはなかった。
わたし、次に進む。
(つづく)